今年の桜の開花は例年より早く、この日は名残の桜となりましたが、ここ光が丘公園はたくさんの花見客で賑わっていました。そのような花を楽しむ人たちを尻目に、花には目もくれず、ひたすら地面を見つめて歩く集団は、彼らの目には若干怪しげに映ったかもしれません。
春にキノコ観察会を実施しているキノコの会は、キノコ入門講座以外にはあまり聞きませんが、あえてこの時期にそれを実施しているのは、この時期にしか出会えないキノコが少なからずあり、受講生の皆さんにそれを実感していただきたいという思いがあるからです。春にはキクラゲ類やチャワンタケ類のきのこが多く発生し、この日もキクラゲ類のキクラゲ・アラゲキクラゲや、チャワンタケ類のアミガサタケ・トガリアミガサタケ・ツバキキンカクチャワンタケ・カニタケなどと出会うことができました。また、周年で見られるサルノコシカケ類も、この時期まだ葉の茂っていない林ではきのこを探しやすく、多様な種を観察することができました。
椿の花が落ち始める頃、その樹下にはツバキキンカクチャワンタケが発生します。受講生の皆さんで、椿の樹下にツバキキンカクチャワンタケを探しました(左)。
ツバキキンカクチャワンタケは、椿の花に胞子が取り付いて菌糸を伸ばし、やがて菌核を作って来年の椿の開花を待ちます。したがって、きのこを掘り出してみると、柄の先には菌核(下)が付いています。
冬から春にかけて多く発生するキクラゲ類のきのこも観察することができました。キクラゲ(下左)とアラゲキクラゲ(下右)がいずれも倒木上に発生していました。
晴天続きで、出会ったきのこの多くが典型的な姿ではありませんでしたが、春に発生する多くのキノコを観察することができ、参加された受講生の皆さんには楽しんでいただけたようです。ここ光が丘公園は周年でキノコを観察することができ、キノコ入門講座では、今年は夏にも観察会を予定しています。多くの受講生の皆さんの参加を期待しております。
アミガサタケ科のきのこもこの時期に多く発生します。また、その狙い目は桜と銀杏の樹下とも言われています。この日も数は少なかったものの、銀杏の樹下でアミガサタケ(左)を、桜の樹下でトガリアミガサタケ(右)を観察することができました。
多様な春のキノコとの出会いはありましたが、ここ一週間余りの晴天続きで、多くのきのこが干物状態でした。最初に観察したヒラタケも、一週間前の下見の時は、雨上がりでもあり見事な姿(下左)でしたが、この日はご覧のとおりの姿(下右)になっていました。しかし、新鮮な状態ばかりでなく、このような状態を見ておくのもキノコを同定するうえには必要だと、講師の大舘さんは少々苦しい解説をされていました(右)。
大きな切り株のまわりに、茶碗形のきのこが群生していました。チャワンタケ科のきのこかと思われましたが、茶碗の内面には皺があり(下左)、基部に太く短い柄があり、きのこの裏面には褐色で粒状の鱗片がみられる(下右)ことからカニタケであることが分かりました。カニタケは幼時茶碗型をしていますがアミガサタケ科に属し、成菌では平らになります。ここ光が丘公園では初めての出会いでした。
サルノコシカケ類のきのこも多くの種を観察することができました。立ち枯れた木を一面に覆うように発生したニクウスバタケ(下左)、切り株にはネンドタケ(下中)が、落ち枝にはセンベイタケ(下右)が発生していました。
4月の観察会「光が丘公園キノコウォッチング」
春のキノコを堪能
4月1日(日) 都立光が丘公園 参加28名