暑い夏が過ぎ涼風が心地よい日が続き秋雨前線が近づいてくると、いよいよ秋きのこの始まりです。キノコ入門講座とそのスタッフが講師を担当する市民講座ではこの時期、光ヶ丘公園、森林公園、小山内裏公園などで観察会を実施しています。その予習もかねて、秋にに公園で出合えるキノコの数々を長谷川さんが紹介されました。
 はじめに今年も観察会を予定している上記3公園の植生が紹介され、それらの公園でこれまでに秋に観察できたきのこを、落ち葉を分解するキノコ、樹木と共生するキノコ、腹菌類のキノコ、子のう菌類のキノコの4グループに分けて解説されました。

落ち葉を分解するキノコ
 積もった落ち葉を分解し土に戻す森の掃除屋キノコで、いずれもセルローズとリグニンを分解する白色腐朽菌。次々の落ちてくる葉を分解して菌糸で繋ぎ、厚い菌糸層の城を作って定住する。
 草地や腐食地、落ち葉上などに発生する腐生菌11種が紹介され、その観察法は、胞子紋の色→傘・柄の表面→ヒダの疎密という順序で観察を行い、胞子紋が白い種としてアマタケ、オオホウライタケ、ハナオチバタケなど、胞子紋が黒い種種としてコキララタケ、ハゴロモイタチタケなどが解説されました
 気温が上昇して20℃を越え梅雨前線が近づいてくると、いよいよ夏きのこの始まりです。シイ・カシ類の樹下には、テングタケ類・イグチ類・ベニタケ類の菌根生の、草地にはハラタケ科の、腐食地・落ち葉・枯れ木上にはナヨタケ科。オキナタケ科・モエギタケ科のきのこが姿を現します。6月には新宿御苑での観察会も予定されていますので、その予習もかねて、夏に公園で出合えるキノコの数々を木原さんが紹介されました。

 テングタケ属では11種が紹介され、その観察法は、傘の条線の有無→外被膜の形状の順で行い、条線が有る種としてアカハテングタケ、タマゴタケ、テングタケダマシなど、条線が無い種としてフクロツルタケ、ヘビキノコモドキ、コトヒラシロテングタケなどが紹介されました。
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 第1回キノコZoomセミナー
 2月25日(日)参加13名
「早春にきのこを楽しむ楽しむ」
講師 池田 順子
 第3回キノコZoomセミナー
 9月8日(日)参加15名
「秋に公園で出合えるキノコ」
講師 長谷川原 明
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腹菌類のキノコ
上に紹介したきのこは傘の裏のヒダや管孔を作り、その表面で胞子を作るが、腹筋類はきのこ内部で胞子を作る。従ってできる胞子の数は一桁上の数となる。
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 第2回キノコZoomセミナー
 5月26日(日)参加15名
「夏に公園で出合えるキノコ」
講師 木原 正博
 イグチ類では15種が紹介され、その観察法は、柄の表面状態→管孔の色→肉の変色という順序で観察を行い、柄の表面に網目がある種としてムラサキヤマドリタケ、ホオベニシロアシイグチなど、柄に粒点がある種としてアカヤマドリ、ウラグロニガイグチなど、柄に条線がある種としてコウジタケなどが解説されました。
 ベニタケ科では13種が紹介され、その観察法は、まず柄が縦に裂けないことでベニタケ科であることを確認→傷つけて乳液が出るか否か→傘の色→傘の表面状態という順序で観察を行い、乳液が出るチチタケ属としてキチチタなどケ、ヒロハウスズミチチタケ、乳液の出ないベニタケ属としてアイバシロハツ、チギレハツタケ、ヤブレベニタケなどが解説されました。
 成菌は周年で見ることができますが、この時期にだけ幼菌を観察できるのが、サルノコシカケ類のきのこです。ベッコウタケの成菌は大型のきのこですが、この時期発生する幼菌はそれとは想像できないような可愛い姿をしています。この時期に幼菌を見つけておいて、その成長過程を一年かけて観察するのはいかがでしょう。
ベッコウタケの幼菌(左上)と成菌(左下)
 今回のZoomセミナーでは、春のきのこを紹介しましたが、次回は「夏に公園で出合えるきのこ」として、夏のきのこを紹介します。今年のZoomセミナーでは、それぞれの時期に発生する種を、それぞれの時期の観察会に合わせて紹介していきます。観察会と合わせ、多くの皆様のZoomセミナーへの参加をお待ちしております。
ツバキキンカクチャワンタケ
 公園などでも通年で見られるキクラゲ類に、キクラゲとアラゲキクラゲがありますが、春にはツブキクラゲ、ヒメキクラゲ、シロキクラゲなどに出会うことができます。なかで、あまり出合うことができないヒダキクラゲを、この時期光ヶ丘公園で見ることが期待できます。

ヒダキクラゲ(左)
半背着生で、子実層面には多数のひだがある。また、反転してできる傘には剛毛と環紋があるので、サルノコシカケ類にも見える。
サトノタマゴタケ
テングタケ属

傘は赤色で条線があり、柄は黄色地に赤の斑模様、膜質の黄色いツバと白いツボがあり、ヒダは黄色。

コトヒラシロテングタケ
テングタケ科テングタケ属

傘は白くパッチ状の外被膜の破片が付着し条線は無い、柄も白く膜状のツバと基部に段状のツボがある。

オオキヌハダトマヤタケ
アセタケ科 アセタケ属

傘は中高で黄褐色、表皮が放射状に裂け、柄は白で、細長く上下同径。ヒダは白から褐色になる。

 春に多く見られる種には、キクラゲ類やチャワンタケ類があり、あまりお馴染みのない種に、受講された皆様も戸惑われたようでした。今年3月に観察会を予定している光ヶ丘公園でも出会いが期待されるツバキキンカクチャワンタケやモクレンキンカクチャワンタケなども紹介されましたが、その小ささに、どのように見つけたらよいのかのかなど、早、思いは観察会へと馳せておられました
樹木と共生するキノコ 
菌糸が樹木の根と菌根という連結部を作り、樹木と物質交換をして共生するキノコを菌根菌と言い、公園にはテングタケ属、イッポンシメジ属、アセタケ属、イグチ科、ベニタケ科などの菌根菌が棲んでいる。
オオホウライタケ
胞子紋白、傘に条線、ヒダは疎


コキララタケ
胞子紋黒、傘にかさぶた状鱗片、ヒダは密


ハゴロモイタチタケ
胞子紋黒、傘に皺状条線、ヒダは密


 気温が上昇して雨が多くなる梅雨時と、逆に気温が下降して雨の日が増える秋がきのこ発生のハイシーズンですが、春や冬にもきのこは発生します。特に春は、夏や秋にはあまり見られない種の発生もあり、新緑や花とともにきのこで早春を楽しむことができます。そんな、春に出合えるきのこの数々を池田さんが解説されました。
 昨年スタートした”キノコZoomセミナー”ですが、3回実施いたしましたが、いずれもたいへん楽しく充実した集いとなりました。今年も3回予定しておりますが、その第1回は昨年に増して多くの皆様に受講していただき、また皆様たいへん熱心に取り組まれ、昨年にも増して内容の濃いセミナーとなりました。
子のう菌類のキノコ
カエンタケ
以上のキノコは担子器内に胞子を作る担子菌門だが、このキノコは子嚢中に胞子を作る子のう菌門に属し、全身が炎のように赤い猛毒菌である。
ツチグリ
ディプロシスチジア科
ツチグリ属

幼時小型の類球形で、後外皮が割れて星型に開き、基本体が現れれて頂部に穴があき胞子を放出する。
ノウタケ
ハラタケ科ノウタケ属
大型の類球形で、幼時平滑だが次第にシワができ脳状になる。肉は白から黄色さらに褐色の粉状になり。表皮が剥がれ胞子を飛散する
ヤマジノカレバタケ 
ツキヨタケ科モリノカレバタケ属

傘は赤褐色で放射状のシワ状条線があり、ヒダはやや疎で襟帯を作り、柄全体に微毛が密生する。 右図が襟帯。

オオホウライタケ 
ホウライタケ科 ホウライタケ属

傘は大型で淡黄褐色、放射状の溝線があり、ヒダは極めて疎、柄は硬く褐色。図の赤丸は菌糸層。

ユキラッパタケ
キシメジ科 ハイイロシメジ属
全体が白く、傘の径2~3㎝程の小型で漏斗型のきのこで、傘中央のくぼみは柄の下部に達する。
ワサビカレバタケ
ツキヨタケ科モリノカレバタケ属
傘は淡褐色でツヤがなくなめし革状で放射状のシワがある。柄の下部は黄色の細毛で覆われる。肉には辛味がある

ムラサキヤマドリタケ
柄に網目、管孔黄色、肉の変色無し


ウラグロニガイグチ
柄に粒点、管孔黒、肉の変色無し


コウジタケ
柄に条線、管孔黄色、肉は青変


アイバシロハツ
乳液無し、傘が白、表面
平滑
ヒロハウスズミチチタケ
乳液あり、傘が灰褐色、
表面に皺と条線
ケショウハツ
乳液無し、傘が赤・黄色
、表面微粉状
タマゴタケ
条線が有り、外被膜が膜状
テングタケダマシ
条線が有り、外被膜が脆質
コトヒラシロテングタケ
条線が無く、外被膜が癒着
ウメハルシメジ
 チャワンタケ類やキクラゲ類が多くみられるこの時期、傘と柄のあるきのこ、ハラタケ類はどうかといえば、春にだけ発生するというハラタケ類のきのこがあります。ハルシメジ、エノキタケ、カンゾウタケなどはこの時期にだけ見られるきのこです。なかでハルシメジはウメハルシメジともいわれるように、梅林にこの時期だけ発生する美味しいきのこです。ゴールデンウイーク前後が最盛期なので、お馴染みの梅園がおありの方は、その時期お出かけになってはいかがでしょう
クサウラベニタケ
イッポンシメジ属
傘は灰褐色で平滑、ヒダは白く、後に薄紅色。柄は白く中空。無味で小麦粉臭がある。
チチアワタケ
イグチ科属ヌメリイグチ属
マツの樹下に発生、傘は黄褐色で粘性があり、管孔は淡黄色で、幼時白い乳液を分泌する。
ケショウハツ
ベニタケ科科バニタケ属
傘は幼時淡黄色で 次後に赤色を帯び、ヒダは白色。カブトムシの臭いがする。